第17巻 第2号 平成14年(2002年)1月 和文要約

表題
ゼロリスク要求についての領域分類:認知的特性の探索的研究
著者
中谷内 一也(帝塚山大学人文科学部)
要約
本研究の目的は人々がどのような領域においてゼロリスクを望むのかを質問紙調査を通して検討することである。調査対象者(静岡県及び愛知県在住者)273名に対して61項目の科学技術や活動、できごとなどを提示し、それぞれについてどの程度ゼロリスクを望むかを7段階評定尺度上に回答するよう求めた。取りあげた項目はリスク認知についての先行研究から選択し、さらに、日本で社会問題となっていることがらをいくつか加えた(例えば、ダイオキシンや学校でのいじめ、など)。分析の結果、自発的活動、対人的紛争、自然災害などの領域にある項目についてはゼロリスク要求が低いことが明らかになった。一方、ゼロリスク要求が高い項目については、特定の領域に絞られることはなく、原子力技術、医療行為、いじめ、拳銃、などが上位にあがった。リスクの規制を望む程度について検討された先行研究と比較しながら、これらの領域においてゼロリスク要求が高くなる原因について考察した。
キーワード
リスク認知、リスクコミュニケーション、リスクマネジメント、リスク削減、環境
表題
共感的コーピング尺度の作成と精神的健康との関連性について
著者
加藤 司(関西学院大学)
要約
本研究の目的は、共感的コーピング尺度を作成しその信頼性と妥当性を検証すること、および共感コーピングと心理的ストレス反応との関連性を研究することである。研究1では、共感コーピング尺度の因子構造と信頼性の検証がなされた。その結果、共感コーピング尺度は認知・情動的コーピング、行動的コーピングの2因子からなることが明らかとなった。研究2では、共感性、向社会的行動、対人ストレスコーピングとの関連性による妥当性の検証がなされた。研究3では、共感的コーピングと心理的ストレス反応との関連性を検証した結果、共感的コーピングの使用頻度が高いほど心理的ストレス反応が低いことが明らかとなった。
キーワード
キーワード: 共感、コーピング、対人ストレス
表題
若者が抱く世代間格差感・世代イメージと親からの過去についての語りとの関連性
著者
堀田 美保(近畿大学文芸学部)
要約
本研究では、若者が過去に関して親から語りを聞いた経験に焦点をあて、その経験が、若者が抱いている親世代イメージや親世代との格差感とどのように関連しているかを検討した。大学生284名を対象に調査を行った。その結果、第一に、過去についての語りは父親からよりも母親からが多く、聞き手である回答者自身が幼かったときの話がそれ以前の話よりも多い。第2に、母親からの語りの頻度が高い場合には,親世代はよりバイタリティがあるとイメージされた。女子回答者においては父親からの語り頻度に関しても母親と同様の傾向が見られた。また、語りを聞いて「かわいそうだと思った」などの感想とタフな親世代イメージ、「羨ましい」「おもしろかった」などの感想とバイタリティのある親世代イメージが関連しているというケースが見られた。第3に、母親からの語りの頻度が高いほど、いくつかのトピックに関して世代間格差感はより小さかった。女子において、父親からの語りの頻度が高いと格差感はより小さかった。親による過去について語り、親子関係や世代関係に関する今後の研究の可能性について論議が加えられた。
キーワード
世代間格差、世代イメージ、語り、親子関係、若者
表題
CMCの社会的ネットワークを介した社会的スキルと孤独感との関連性
著者
五十嵐 祐(名古屋大学教育発達科学研究科)
要約
本研究では、Levin & Stokes(1986)の社会的ネットワーク媒介モデルと認知的バイアスモデルに基づき、社会的スキルが、(1)対面状況(Face-to-Face; FTF)、および(2)コンピュータを介したコミュニケーション(Computer-Mediated Communication; CMC)の社会的ネットワークを介して孤独感に影響を与える過程と、社会的ネットワークを介さず孤独感に直接影響を与える過程について検討した。研究1では大学生211名を、研究2ではインターネット上で募集した164名を対象とした。重回帰分析の結果、FTFの社会的ネットワークは社会的スキルから影響を受け、孤独感を低減させていた。一方、CMCの社会的ネットワークは社会的スキルの影響を受けるものの、孤独感を低減させていなかった。また、社会的スキルが孤独感に直接影響する過程も示された。これらの結果は、対人関係の親密化に及ぼす非言語的手がかりの重要性の観点から議論された。
キーワード
CMC、社会的スキル、孤独感、社会的ネットワーク