第30巻 第2号 2014年11月 和文要約

表題
集団と個人の地位が社会的支配志向性に及ぼす影響
著者
杉浦仁美(広島大学大学院総合科学研究科・日本学術振興会)
坂田桐子(広島大学大学院総合科学研究科)
清水裕士(広島大学大学院総合科学研究科)
要約
本研究は、同一集団であっても比較する集団が異なることによって社会的支配志向性(SDO)に違いが生じうることを検討した。本研究ではSDOを「集団支配」と「平等主義」の2因子に分け、相対的に低い地位の集団と比較した場合に集団支配志向性が高く、逆に高い地位の集団と比較した場合には、平等主義志向性が高いと予測した。さらに、この傾向は比較集団と近い集団内地位にいるものほど顕著であると予測した。大学生を対象に、比較する外集団の地位を変えて集団間地位を操作し、集団内地位と併せてSDOへの影響を検討した。研究1ではいずれの影響も見られなかったが、研究2では SDO尺度を改良することで予測を支持する結果を得た。つまり、低地位集団と比較した場合、集団内低地位者の集団支配志向性が高まり、高地位集団と比較した場合、集団内高地位者の平等主義傾向が高まった。
キーワード
社会的支配志向性、集団間地位、集団内地位、社会的支配理論、相対的地位
表題
人はなぜモノを溜め込むのか:ホーディング傾向尺度の作成とアニミズムとの関連性の検討
著者
池内裕美(関西大学社会学部)
要約
本研究では、「ホーディング傾向」を“何らかの主観的な意味を付与しているために、モノを溜め込み、処分できない性向”と規定し、web調査による2つの研究を行った。まず研究1では、一般の人を対象とした「ホーディング傾向尺度」の作成を試み、410名の対象者に質問紙が配信された。また研究2では、ホーディングの規定因として「アニミズム」に注目し、「ホーディング傾向」との関連性について検討を試みた。調査対象者は234名であった。主な結果は以下の通りである。1)ホーディング傾向項目群を因子分析した結果、「物質多量」、「処分回避」などの6つの下位尺度(28項目)が抽出された。これらは、ホーダーのモノに対する態度特性を示している。2)ホーディング傾向と強迫性購買との間に高い相関が見いだされ、尺度の基準関連妥当性も高い水準で認められた。3)アニミズム的思考はホーディング傾向に影響を及ぼしていることが見いだされたが、特に所有者の分身化と所有物の擬人化が強く関連していることが示唆された。
キーワード
ホーディング、アニミズム、擬人化、強迫性購買、拡張自己
表題
評判生成規範の類型がパーソナル・ネットワークのサイズに及ぼす効果
著者
鈴木貴久(総合研究大学院大学複合科学研究科・日本学術振興会)
小林哲郎(国立情報学研究所)
要約
本研究では、評判を生成する際の規範がパーソナル・ネットワークのサイズにもたらす効果を明らかにする。先行する理論研究による予測をベースに、評判の悪い相手に対する行動を悪く評価する評判生成規範に従う人ほどパーソナル・ネットワークのサイズが小さいという仮説を検証する。シナリオを用いた場面想定法を用いて測定された評判生成規範を独立変数とし、従属変数であるサポートネットワークのサイズに対する効果を検討した。その結果、評判の悪い相手に対する協力行動を許容しない規範に従って評判を生成する人は、許容する規範に従って評判を生成する人と比べてサポートネットワークサイズが小さいことが示された。このことから、甘やかしを許さない規範によって生成された評判の利用は協力的関係のサイズを小さくしてしまう可能性が示唆された。
キーワード
評判、協力行動、サポートネットワーク
表題
自己ならびに他者への信念や期待が社会へのイメージと将来への時間的展望に及ぼす影響
著者
金政祐司(追手門学院大学心理学部)
要約
本研究では、自己ならびに他者への信念や期待として捉えられる愛着二次元が、社会へのイメージを媒介して将来への時間的展望に及ぼす影響について検討を行った。予備調査ならび研究1において社会イメージ尺度の作成が行われ、研究2では、大学生571名、青年期後期社会人590名、成人期前期社会人397名を対象に調査が実施された。上記の3群を要因とした分散分析の結果、いくつかの変数に関して平均値の差異が認められた。しかしながら、各変数間の相関分析の結果では、3群すべてで関係不安と親密性回避は、将来への時間的展望である目標指向性や希望と有意な負の関連を示していた。さらに、仮説モデルについて多母集団同時分析を行った結果では、3群で共通して、関係不安は、ネガティブな社会イメージを、また、親密性回避は、ポジティブならびにネガティブな社会イメージを媒介して将来への時間的展望に影響を及ぼすことが示された。
キーワード
青年・成人期の愛着二次元、社会イメージ、将来への時間的展望、大学生、社会人
表題
事故・災害生起確率の集団・時間表現によるリスク認知の違い
著者
広田すみれ(東京都市大学メディア情報学部)
要約
リスクコミュニケーション内の生起確率についての時間/集団単位の表現がリスク認知に与える影響を検討した。実験1では5つの事故災害の死亡率を具体名は伏せ時間と集団単位で示し、頻度、恐怖感、対処の希望の程度の評価の違いを集団間比較した。結果は全対象で時間単位が集団単位より頻度及び怖さが有意に高く、対処の希望でもより強い対処を望む傾向が見られた。実験2では具体的事故・災害名を加えた場合を3つの従属変数で検討した結果、やはり時間単位の方が集団単位より高く評価され、また9つの質的評価尺度で得た結果を因子分析した結果、表現による印象差もあることが明らかになった。実験3では係留効果を考慮し、分母や分子の数値の絶対的な大きさの効果を制御した上で時間と集団単位の影響を検討した。その結果、数値による係留効果を除いても部分的だが表現によって評価に差が見られた。最後に時間単位が集団単位より影響が強い心理学的理由と応用場面における意味を考察した。
キーワード
リスクコミュニケーション、リスク表現、不確実性、集団単位、時間単位
表題
勝敗、感情状態、運の知覚がギャンブル行動の無謀さ・手堅さに及ぼす影響
著者
高田琢弘(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
湯川進太郎(筑波大学人間系)
要約
日本人大学生を対象とし、勝敗、感情状態、および運の知覚がギャンブル行動に与える影響を実験によって検討した。実験参加者(男性21名、女性21名)は、18試行からなるGame of Dice Taskを実施した。第1試行の前と各試行の後に、実験参加者の感情状態と運の知覚の測定を行った。結果から、勝った後の方が負けた後よりも、快感情、活性状態、運の知覚が高まることが示された。また、手堅い賭けで負けた後の方が勝った後よりも、後続する選択が手堅くなりやすいことが示された。これらの結果は、ギャンブル行動のメカニズムを理解する上で、勝敗の影響が重要であるということを示している。
キーワード
ギャンブル、感情状態、運の知覚、勝敗、game of dice task