早期公開 和文要約

[原著論文]
手続き的公正の対人的要因に対する注意の調整効果の実験: 原子力発電所再稼働に関する首相のスピーチに対する印象形成
著者
今在 慶一朗(北海道教育大学)
要約
手続き的公正の知覚は政治的決定の受容を促進すること、手続き的公正は権威者の印象によって知覚されやすいことは先行研究によって確認されてきた。他方、政治的問題について人々は、常に詳細に検討を行うわけではなく、しばしば周辺的な情報を用いてヒューリスティックな処理を行い、態度を決定すると考えられる。本研究では、原子力発電所の再稼働に関する首相のスピーチについて、印象形成の実験を行った。参加者を注意の集中度に応じて分割し、首相に対する評価と手続き的公正、決定に対する支持の関係について分析を行った。全体的に、説明責任に対する評価が手続き的公正や決定に対する支持を促進することが確認されたが、加えて、集中度が高い群の参加者ほど説明責任の評価の手続き的公正に対する効果が顕著であった。
キーワード
手続き的公正、注意、説明責任、中心/周辺ルート
[原著論文]
裁判員裁判を想定したフォーカスグループの効果の検証
著者
荒川 歩(武蔵野美術大学造形構想学部)
菅原 郁夫(早稲田大学大学院法務研究科)
要約
陪審コンサルタントによるフォーカスグループは、アメリカでは一般的であるが、日本ではあまり使われておらず、この方法の効果についても検証されていない。本研究では裁判員制度を想定して本効果を検討した。最初に11人の大学生がフォーカスグループに参加し、想定事件の争点となる言葉(e.g.,正当防衛)や説得主題(e.g., 我を失った状態での行為)についてどのように感じるか議論した。その内容は、一般の大学生ならどうこたえると思うかという法科大学院生による予測と比較された。次に、別の法科大学院生1名が、このフォーカスグループの結果の要約を読む前後に最終弁論を書いた。さらに、別の大学生31人が、2条件(フォーカスグループの結果を踏まえた弁論を読む条件15名、踏まえていない弁論を読む条件16名)のうちのいずれかに割り当てられ、その上で有罪・無罪判断、その確信度を回答し、弁論のうち影響を受けた部分に印をつけた。印をつけられた言葉は数量化された。有罪率に条件差は認められなかったが、無罪と回答した人の確信度は向上し、参加者はフォーカスグループの結果を踏まえた弁論に影響を受けていた。この結果は、評議の中で議論される最終弁論を書く上でフォーカスグループが有効であることを示す。
キーワード
裁判員制度、陪審調査、フォーカスグループ、視点取得、法と心理学
[原著論文]
2者から異なる方向に説得される状況での被説得者の認知資源と態度変容プロセスの関連の検討
著者
中村 早希(関西学院大学大学院文学研究科)
三浦 麻子(関西学院大学文学部/大阪大学大学院基礎工学研究科)
要約
本研究は、複数源泉・複数方向の説得状況における態度変容プロセスを解明すべく、その状況の最小構成単位である2者が異なる方向に説得する状況を設定し、ヒューリスティック-システマティックモデル (HSM) による態度変容プロセスの説明可能性を検証するものである。具体的には、説得的メッセージを提示する際の受け手の認知資源を制限することによって、ヒューリスティック処理あるいはシステマティック処理のいずれかがなされやすい状況を設定し、外集団成員の方が内集団成員よりも論拠が強いメッセージを提示した場合にそのどちらの説得に応じるかを測定した。認知資源を二重課題の実施(研究1)やメッセージの提示時間(研究2)によって制限した場合、そうでない場合と比較して、内集団成員の唱導方向へ、つまり好ましいヒューリスティック手がかりを持つ方向への態度が形成された。この結果は、複数源泉・複数方向の根幹のプロセスをHSMで説明できることを示している。
キーワード
複数源泉・複数方向の説得状況、HSM、認知資源