本研究の目的は、知覚的流暢性の低い条件を作り、この条件下では今まで見出されてきた閾下単純接触効果や有名性効果が弱まることを示すことで、こうした効果の媒介過程として知覚的流暢性の誤帰属が妥当であるかを確認することである。このため、通常の反復呈示によって知覚的流暢性を高める群と、反復呈示はするが最適処理転移の原理を利用して知覚的流暢性をあまり高めない群を用意する。
認知心理学の分野では、学習時と課題時の刺激形態が異なる(例えば、学習時に片仮名で呈示・課題時に平仮名で呈示する)場合には、先行呈示による処理効率の促進は得られないことが示されている(最適処理転移の原理)。つまり、りんごを片仮名表記で学習し、平仮名表記の課題を後に行った場合には、片仮名表記の課題を行うよりも処理の促進は低いことになる。そこで、本研究では、刺激(人間の名前)を閾下で呈示し、単純接触効果や有名性効果の有無を検討する。さらに、この際に、半分の被験者には片仮名表記で、もう半分の被験者には平仮名表記で名前刺激を呈示する。従属変数は、知覚的同定率(知覚的流暢性の測定)、好意度判断(単純接触効果)、有名性判断(有名性効果)である。これらの従属変数を測定する際、さらに、半分の被験者は平仮名表記の課題が呈示され、もう半分の被験者は片仮名表記の課題が呈示される。
リサイクルの普及といった環境問題への対処には住民(消費者)一人ひとりの協力が不可欠であるが、社会的ジレンマであるため協力行動を引き出すのは容易ではない。こうした社会的ジレンマの解決に関して、これまで実験室実験やゲーミング・シミュレーションによって実証データが蓄積されている。しかし、社会的ジレンマの理論を精緻化していくには、現実社会の問題に関わる実証データが不可欠でる。また、容器包装リサイクル法の実施により、ゴミ減量を目的とした資源リサイクルが社会的に求められており、社会心理学の諸理論・諸技法による現象の分析の必要性は、環境問題の専門家からも指摘されている。
行政によって資源ゴミの分別収集が導入された地域社会における住民の資源リサイクルへの協力行動について、以下の方法を利用し、補完的に現象を明らかにする。