ペットと飼い主の関係の質およびペットが飼い主の健康と対人関係に与える影響について、以下のmixed model approachによる方法を用いて現象を明らかにする。
量的調査
社会調査: 1の質的調査から得られたデータをもとに質問項目を作成し、質問紙法を用いて上記の仮説を検証する。主な質問項目は、(1)ペットに関する基礎的項目(ペット飼育の有無、飼育場所等)、(2)ペットとの関係(ペットとのコミュニケーション、ペットへの愛着、ペットを飼っている人のイメージ等)、(3)対人関係(家族・友人の数、親密性、ソーシャルサポート、社会活動、ペットを介した対人関係)、(4)精神的健康(幸福感、孤独感、自尊心)、(5)個人特性(依存性、社交性、共感性)などである。対象者は無作為抽出による幅広い一般の成人サンプルとする。それにより、ペット所有者と非所有者の社会的ネットワークの違いやペット飼い主に対する意識の違いを明らかにし、ペットやペットへの愛着のあり方が所有者の対人交流および心理的健康に与える影響を検討する。本研究の目的は,高等霊長類,特に人間が,なぜ他の動物と異なり,1対1の限定的・固定的な関係を越え,集団において秩序を維持することが可能なのかを検討することである.集団規範の逸脱者に対する加罰行動に関しては,社会的ジレンマ研究として理論的・実験的研究が行われている(cf. 山岸, 1990).また,進化生物学,動物行動学の知見から,多くの社会的動物は2者関係で自己への攻撃などに反応するが,直接利害関係のない第3者に対する攻撃(社会秩序の侵害)に感情的に反応する動物は高等霊長類に限られることが示されている.本研究は,感情の適応的機能(亀田・村田,2000)という進化心理学的観点から,この2つのアプローチから得られた知見を統合し,人間社会における規範維持メカニズムを理論的・実証的に検討することにある.集団規範の維持と加罰行為に関する近年の理論的研究は,人間が交換関係に社会的に埋め込まれている,すなわち人間が複数の交換に同時に所属することに着目し,集団内の規範の逸脱者を,別な交換関係から排除することにより,規範が維持される可能性を示している(cf. 青木,2001).しかし,人々が複数の交換ドメインに従事する事実は,以下の2点により,異なる交換ドメインの行動の連動と等価とはならない.第1に,規範逸脱者を別な交換関係から排除することは,その交換関係から得られる利益を放棄するというコストを伴う.
研究方法1:シミュレーション 本研究ではまず、社会における、利他的な人に対しては利他的に振舞う、「選別的利他戦略」が、直接の見返りを期待できない状況における利他行動の成立に果たす役割を、シミュレーションを用いて理論的に検討する。直接の見返りを期待できない状況における利他行動を扱うため、giving gameを用いたシミュレーションを実施する。giving gameでは、エージェントはランダムに割り振られた相手に一方的に資源を提供するか否か(=利他的に振舞うか否か)を決定し、またそれとは独立にランダムに決められた他者から資源を提供されることによって利益を得る。
他者に対して資源を提供する利他的な戦略が、資源を一切提供しない非利他戦略よりも大きな利益を得ることができるとすれば、その社会においては直接の見返りがなくとも利他的に振舞うことが適応的な行動であるということができる。これまで数理解析やシミュレーションを用いたいくつかの研究では、資源を提供するか否か決定する際に、その相手の過去の行動履歴を参照し、過去に誰かに資源を提供した相手には資源を提供し、そうでない相手には提供しないという選別的利他戦略が、一切利他行動をとらない非利他的戦略よりも大きな利益を上げることが示されている(e. g., Nowak & Sigumnd, 1998; Leimar & Hammerstein, 2001)。特に近年では、具体的にどのような選別基準を用いて「利他的」な人を識別する戦略が、他者の利他行動にただ乗りする搾取者を駆逐し、人々が利他行動をとりあう状態を成立させるかに焦点を当てた研究が行われてきた(Leimar & Hammerstein, 2001; Panchanathan & Boyd; 2002)が、これらの研究においては、全面提供戦略や全面非提供戦略を含め、研究者側が想定した範囲の限られた戦略のみを投入した、限定された状況における結果に過ぎないという問題点がある。本研究ではこの問題を回避するため、論理的に想定可能なあらゆる戦略が存在しうる状況で進化可能な利他戦略を再検討する。このことにより、いかなる選別基準をもつ戦略が、利他的に振舞わない戦略に優越し進化しうるのかについて理論的検討を行う。