第33巻 第1号 2017年8月 和文要約
- 表題
- 愛着不安と自己愛傾向は適応性を阻害するのか?:
周囲の他者やパートナーからの被受容感ならびに被拒絶感を媒介要因として
- 著者
- 金政祐司(追手門学院大学心理学部)
浅野良輔(久留米大学文学部)
古村健太郎(弘前大学人文社会科学部)
- 要約
- 本研究では、愛着不安と自己愛傾向が適応性に影響を及ぼす際の共通項と差異を明らかにするため、愛着不安と自己愛傾向が周囲の他者あるいはパートナーからの被受容感・被拒絶感を媒介して個人内適応ならびに個人間適応に影響を及ぼすという仮説モデルについての検討を行った。調査対象者は、研究1は大学生580名、研究2は20代から50代の夫婦582組であった。それらの結果、愛着不安と自己愛傾向は共に、個人間適応の低さである一般他者もしくはパートナーへの攻撃性を高めること、さらに、それらの攻撃性への影響は、周囲の他者やパートナーからの被受容感によって媒介されることが示された。加えて、愛着不安は個人内適応の低さである抑うつ傾向を高めるが、自己愛傾向は抑うつ傾向を抑制するように作用すること、また、それらの影響は共に被受容感によって媒介されるという結果が得られた。
- キーワード
- 愛着不安、自己愛傾向、個人内適応、個人間適応、被受容感・被拒絶感
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- 表題
- 規範遵守行動を導く2つの評判:居住地の流動性と個人の関係構築力に応じた評判の効果
- 著者
- 岩谷舟真(東京大学大学院人文社会系研究科/日本学術振興会)
村本由紀子(東京大学大学院人文社会系研究科)
- 要約
- 本研究の目的は、規範遵守行動の先行因を見出すことである。とりわけ、居住地流動性と評判予測に着目して検討を行った。居住地流動性の高い社会では、新たな関係を結ぶ機会が多いため、自らの評判を上昇させることで対人関係を広げることが重要と考えられる。ただし、こうした評判上昇のインセンティブは、各個人の特性によって異なる。すなわち、居住地流動性の高い社会においては、他者との関係構築を求める者に限って、(規範遵守に伴う)評判上昇予測が規範遵守行動につながると予測される。一方、居住地流動性の低い社会では、新しく関係を結ぶ機会が少ないため、自らの評判を上昇させることより、自らの評判低下を防ぎ現在の人間関係を維持することを求めると考えられる。そのため、居住地流動性の低い社会において、人々は逸脱に伴う評判低下を高く見積もり、安全策として規範を遵守すると考えられる。地域活動を1つの規範と見立てた上で、WEB調査を行った所、上記の仮説を支持する結果が得られた。
- キーワード
- 居住地流動性、規範、評判、多元的無知、マイクロ・マクロ連関
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- 表題
- メタステレオタイプ的情報が集団間態度と内集団認知に及ぼす影響:
メタステレオタイプ的情報の望ましさ、及び、自集団ステレオタイプとの一致度に注目して
- 著者
- 田村美恵(神戸市外国語大学)
- 要約
- 本研究では、内集団が外集団からどのように見られているかというメタステレオタイプ的情報が集団間態度や内集団認知に及ぼす影響について検討した。245名の実験参加者を対象に、メタステレオタイプ的情報の望ましさ(ポジティブ、ネガティブ)、及び自集団ステレオタイプとの一致度(一致、不一致)を操作し、外集団からの情報として提示した。その結果、ポジティブなメタステレオタイプ的情報が示された場合には、外集団に対してポジティブな態度が喚起された。また、ポジティブで、かつ自集団ステレオタイプと不一致なメタステレオタイプ的情報は、内集団認知にポジティブな影響を与えていた。一方、ネガティブなメタステレオタイプ的情報が示された場合には、外集団に対してもネガティブな態度が喚起され、それは、提示された情報が自集団ステレオタイプと不一致な場合に顕著であった。ただし、ネガティブなメタステレオタイプ的情報は内集団認知には影響を及ぼさなかった。これらの結果に基づき、メタステレオタイプ的情報が集団間関係の構築に果たす役割と今後の課題について議論した。
- キーワード
- メタステレオタイプ的情報、集団間態度、内集団認知
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