第34巻 第2号 2018年11月 和文要約
- 表題
- チームの振り返りで促進される暗黙の協調:
協調課題による実験的検討
- 著者
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秋保 亮太(中京大学)
縄田 健悟(福岡大学)
池田 浩(九州大学)
山口 裕幸(九州大学)
- 要約
- チーム活動の効率化の観点から注目を集めている概念として、暗黙の協調が挙げられる。この暗黙の協調は、理論的議論が先行し、実証研究が行われてこなかった。そこで本研究では、チームの振り返りと共有メンタルモデルが暗黙の協調へどのように影響を及ぼしているのか検討を行った。本研究では、協調課題を用いた実験室実験を実施した。144名、72チームからデータが得られた。その結果、暗黙の協調は、チームの振り返りによって促進されることが分かった。共有メンタルモデルは、チームの振り返りの影響を受けておらず、また、暗黙の協調に対しても明確な効果をもたらしていなかった。本研究で得られた知見は、チーム活動の改善について考えていく上での一助になるものと考えられる。
- キーワード
- チームワーク、暗黙の協調、チームの振り返り、共有メンタルモデル
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- 表題
- 割引食品に対する衝動性と生活史の関係
- 著者
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豊沢 純子(大阪教育大学)
竹橋 洋毅(関西福祉科学大学)
- 要約
- 本研究は、生活史理論を食行動領域に応用し、社会経済地位(SES)と割引食品に対する衝動性の関係を検討した。500人のウェブ調査の参加者に対して、割引食品に対する衝動性、SES(幼少期SES、現在SES、食の貧困経験)、割引食品に対する認知(健康への影響、味、魅力、限定性)、人口統計学的要因(性別、年齢、世帯収入)に関する回答を求め、階層的重回帰分析を行った。分析の結果、割引食品に対する衝動性は、幼少期SES、食の貧困経験、魅力,限定性、性別と関係があった。また、相関分析の結果から、食の貧困経験があるほど、健康への影響、味、魅力にネガティブな評価を行うこと、それにもかかわらず割引食品を購入していることが示された。考察では、幼少期SESの測定の妥当性を検証する必要性と、食に対するネガティブな信念に働きかけることの有効性を論じた。
- キーワード
- 生活史理論、貧困、衝動性、割引食品、消費行動
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- 表題
- Attitudes Toward Lesbians and Gay Men Scale日本語20項目版(ATLG-J20)の作成と妥当性の検討
- 著者
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堀川 佑惟(日本大学大学院文学研究科)
岡 隆(日本大学文理学部)
- 要約
- 私達は、Herek (1988)のオリジナルの尺度に基づき、Attitudes Toward Lesbians and Gay Men Scale日本語20項目版 (ATLG-J20)を作成すること、そしてその妥当性を検証することを試みた。ATLG-J20は、レズビアンに対する10の意見項目(ATL-J Subscale)とゲイ男性に対する10の意見項目(ATG-J Subscale)、の計20の意見項目からなり、回答者はそれらの声明文に対し賛成または反対の程度を表した。本研究の結果、ATL-JとATG-Jは因子的妥当性、信頼性、収束的妥当性を持つことが示された。さらに、これらの下位尺度と社会的望ましさ反応との間の相関は有意ではなかった。潜在的態度との関連はみられなかったものの、ATLG-J20は、顕在的測度として、妥当性の高い尺度であることが示唆された。
- キーワード
- 態度、ホモフォビア、レズビアン、ゲイ男性、尺度開発
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- 表題
- 社会的支配志向性と外国人に対する政治的・差別的態度:
日本人サンプルを用いた相関研究
- 著者
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三船 恒裕(高知工科大学)
横田 晋大(広島修道大学)
- 要約
- 社会的支配志向性尺度は主に海外において様々な差別的態度や政治的態度との関連が示されてきたが、日本人を対象にした研究は少ない。本研究では学生および非学生の日本人を対象とし、日本においても社会的支配志向性が外国人に対する差別的・政治的態度の理解に有効であるかを検討した。研究1から研究4の結果により、社会的支配志向性尺度の信頼性が確認され、外国人に対するネガティブな印象、外国人を忌避する態度、竹島(日本名、韓国・北朝鮮名は独島)や尖閣諸島(日本名、中国名は釣魚群島、台湾名は釣魚台列嶼)問題への強硬的な態度といった政治的に保守的な態度、そして在日朝鮮人への差別的態度と正の相関が示された。また、政治的・差別的態度の多くでジェンダー差が見られ、この差は社会的支配志向性によって説明された。これらの結果は日本人の政治的・差別的態度の個人差の理解に社会的支配志向性の概念が有効に機能する可能性を示している。
- キーワード
- 社会的支配志向性、偏見、差別、政治的態度
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