第35巻 第3号 2020年3月 和文要約
- 表題
- 「命てんでんこ」の教えに学ぶ防災教育の可能性:防災教育に対する教員の態度と学校組織風土の交互作用効果
- 著者
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前田楓(安田女子大学大学院)
橋本博文(安田女子大学)
- 要約
- 本研究では、防災教育を担う立場にある教員を対象に、1)従来の防災教育に対する意識や認識を尋ねると同時に、2)災害時における危機管理の知恵である「命てんでんこ」の教えを防災教育に取り入れることに対する賛意を尋ねることを目的とするウェブ調査を実施した。公立小・中学校に勤務する教員219名のデータを分析した結果、本研究の調査対象者である教員は、現在行われている防災教育を適切なものとして認識しつつも、そのあり方を変えていく必要があると考えていることが示唆された。また、命てんでんこの教えについては52.1%の教員が知っていること、またその教えを防災教育に取り入れることに対する賛意や現実性も高い水準にあることが示唆された。さらに、そうした賛意や現実性を高めるためには、現行の防災教育を変えていく必要があるという個々の教員の意識に加えて、同僚的な学校組織風土も重要となることが示され、学校教育現場において防災教育にチームで協力して取り組もうとする同僚的風土の重要性も明らかにされた。
- キーワード
- 命てんでんこ、防災教育、学校組織の同僚性
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- 表題
- 自閉スペクトラム症傾向と攻撃行動との関連:アレキシサイミア傾向と攻撃性に着目して
- 著者
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山脇望美(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
河野荘子(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
- 要約
- 本研究の目的は、アレキシサイミア傾向と関連する自閉スペクトラム症傾向が攻撃性と関連することにより攻撃行動と関連することについて検討することであった。参加者は大学生208名であり、自閉スペクトラム症傾向はAutism- Spectrum Quotient、攻撃性はBuss-Perry Aggression QuestionnaireとImplicit Association Test、アレキシサイミア傾向は20 – item Toronto Alexithymia Scale、攻撃行動はAggressive Behavior Scaleと不快ノイズの強度により測定された。分析の結果、自閉スペクトラム症傾向のすべての下位尺度は、アレキシサイミア傾向と関連があった。共分散構造分析の結果、注意の切り替えの困難さと細部への注意は、攻撃性と関連することにより、攻撃行動と正の関連が示された。また、コミュニケーションの乏しさは直接的に攻撃行動と正の関連がみられ、社会的スキルの乏しさは、直接的に攻撃行動と負の関連がみられた。しかしながら、想像力の乏しさは、攻撃性や攻撃行動と関連がみられなかった。ただし、細部への注意と想像力の乏しさは、信頼性が低かった。考察では、自閉スペクトラム症傾向の特徴と攻撃行動との関連について議論した。
- キーワード
- 自閉スペクトラム症傾向、攻撃行動、アレキシサイミア傾向、攻撃性
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- 表題
- グラウンドルールの教示が高齢目撃者の想起成績と被誘導性に及ぼす影響
- 著者
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横田 賀英子(科学警察研究所)
和智 妙子(科学警察研究所)
大塚 祐輔(科学警察研究所)
平間 一樹(科学警察研究所)
渡邉 和美(科学警察研究所)
- 要約
- 本研究では、グラウンドルールの教示が、高齢目撃者の想起成績と誘導質問への被誘導性に及ぼす影響について検討した。分析は、実験参加者の年齢層(高齢群、非高齢群)×グラウンドルール教示(教示群、非教示群)の2要因4水準の参加者間要因計画により実施した。実験参加者は、高齢者61人(65歳~75歳)、非高齢者66人(25歳~35歳)であった。グラウンドルール教示群の参加者は、必要に応じて「分からない」と言ってよいと伝えるなどの面接における会話のグラウンドルールについての面接前の説明を受けた。グラウンドルール非教示群の実験参加者は、そのような説明や教示は受けなかった。実験の結果、高齢群は非高齢群と比較すると、正想起数、誘導質問への被誘導数が統計的に有意に少なかった。この結果は、高齢者は正想起量は少ないにも関わらず被誘導性が低いこと、すなわち、誘導質問への被誘導性は記憶能力の低さのみでは説明できないことを示唆した。さらに、高齢群、非高齢群ともに、グラウンドルール教示群は非教示群と比較すると、誤想起数および誘導質問への被誘導数が統計的に有意に少なかった。この結果より、異なる年齢群において、グラウンドルールの教示が誤想起および被誘導性の抑制に有効であることが示された。
- キーワード
- 加齢、グラウンドルール、被誘導性、目撃者の記憶、捜査面接
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