第37巻 第3号 令和4年3月 和文要約

表題
反移民的態度の規定要因としてのBelief in a Zero-Sum Game
著者
柏原宗一郎(関西学院大学大学院社会学研究科)
清水裕士(関西学院大学社会学部)
要約
本研究は、Belief in a Zero-Sum Game (BZSG;Różycka-Tran et al.,2015)の個人差が、反移民的態度を予測するかについて検討を行った。Esses et al.(1998)では、自国民と移民の間におけるZero-Sum Beliefが反移民的態度を予測すると示されている。しかし、なぜZero-Sum Beliefに個人差が生じ、反移民的態度を予測したのかは検討されていない。そこで一般的な資源分配状況認識の個人差であるBZSG尺度が反移民的態度を予測するのか確認するために2つの研究を行った。研究1,2を通して、BZSGが反移民的態度を予測するという結果が示された。これらの結果は、集団間状況を競争的であると認識することが、反移民的態度に影響することを示唆している。
キーワード
反移民的態度、Zero-Sum Belief、資源の認識、集団間関係
表題
日本における女性の人生満足度とシステム正当化
著者
森永康子(広島大学)
福留広大(福山大学)
平川 真(広島大学)
要約
ジェンダー格差が大きい日本であるが、先行研究では女性の幸福感が男性と同程度か男性以上に高いことが報告されている。なぜ日本の女性は格差の下にいながら幸せなのだろうか。本研究では、システム正当化の緩和機能をもとに、女性は現状のジェンダー役割に関連するシステム(ジェンダー・システム)を肯定することで、幸せを感じているのではないかと予測した。この予測について、著者らが過去に行った調査に新しい調査を加え、合計4つのデータで検討したところ、男性の方がジェンダー・システムを正当化する程度は高かったが、女性の中でジェンダー・システムを正当化する程度が強い人は、人生満足度が高いという傾向が見出された。気をつけたいのは、システム正当化の緩和機能は個人に恩恵をもたらすものなのかもしれないが、社会全体としては格差縮小を阻むものになっている可能性があることだ。
キーワード
システム正当化、人生満足度、ジェンダー、ジェンダー格差、ジェンダー・システム