第38巻 第1号 令和4年7月 和文要約

表題
不思議現象に対する態度尺度改訂版(APPle Ⅱ)の作成
著者
小城英子(聖心女子大学現代教養学部)
坂田浩之(大阪樟蔭女子大学学芸学部)
川上正浩(大阪樟蔭女子大学学芸学部)
要約
本研究の目的は、不思議現象に対する態度尺度を改訂し、懐疑的態度の多様な側面を捉え、信奉的態度と懐疑的態度を精緻に測定可能にすることであった。大学生を対象に質問紙調査が行われた。探索的因子分析の結果、「全面的な否定」、「現状認識に基づく否定」、「占い・呪術嗜好性」、「スピリチュアリティ信奉」、「知的好奇心」、「恐怖」の6下位尺度が抽出され、25項目の新尺度はAPPle Ⅱと名づけられた。内的整合性、確認的因子分析、再検査信頼性、基準関連妥当性の観点から、概ね十分な信頼性・妥当性が確認された。「占い・呪術嗜好性」、「スピリチュアリティ信奉」は信奉的態度、「全面的な否定」、「現状認識に基づく否定」は懐疑的態度と位置付けられるが、分析的思考や批判的思考に最も関連する態度は、信奉的態度とも懐疑的態度とも言いうる「知的好奇心」であることが示唆された。
キーワード
不思議現象、態度、信奉、懐疑、批判的思考
表題
泣き行動に意図性を感じるとサポート意図は抑制される
著者
安原彰子(同志社大学大学院心理学研究科)
竹原卓真(同志社大学心理学部)
要約
感情的な泣きには、他者からサポートを引き出す社会的な機能がある。これはソーシャルサポート仮説と呼ばれ、性別や文化、泣きが生じた場所や感情価を問わず生じると考えられている。しかし、泣き行動に他者を操作しようとする意図性を感じると、サポートは抑制されると予測されているが実際に検証されていない。よって、本研究ではシナリオを用いて泣き行動の有無と意図性を操作し、この予測を検証した (n=44)。その結果、泣き行動に意図性が感じられると、泣いていない場合や意図性のない泣きと比較して、怒り感情が有意に高く、サポート意図は有意に低くなり、予測は支持された。本研究の結果から、どのような泣きでもサポートが引き出されるわけではないことが示され、ソーシャルサポート仮説には例外があることが示唆された。
キーワード
泣き、意図的な泣き、サポート、対人効果、ソーシャルサポート仮説