東京大学大学院人文社会系研究科 社会心理学研究室(亀田達也・唐沢かおり・村本由紀子・白岩祐子)

1.研究室,ゼミの特徴(研究テーマ,学べる内容)

教授陣4名が個別にラボを運営しつつ、連携して教育研究を行います。一方で人の神経・生理基盤にまで分け入り、他方で社会構造や文化へと視野を広げて、旧来の社会心理学を超えた人間知の構築を目指しています。現有スタッフ各々の研究関心は以下のとおりです。

  • 脳科学、経済学、生物学、情報学の先端研究者との共同を通じて、社会的意思決定のメカニズムについて研究しています。最近は、社会価値や正義の認知・神経基盤、共感性や集合行動のメカニズムについて、領域交叉的な検討を行っています。(亀田達也)
  • 人間が、様々な情報に基づいて自らの心の中に「社会」を描き出す過程の背後には、どのような心のメカニズムがあるのでしょうか。この問いを、特に「Moral agent」(道徳的主体)としての私たちの認知特性に焦点を当てて考えています。(唐沢かおり)
  • 社会環境と個人の心理・行動傾向とのダイナミックな関係に関心を持ち、「心の文化差」が生じるメカニズムや、集団規範や文化的慣習が生成・維持される過程について、実験とフィールドワークを両輪としたマルチ・メソッドで研究しています。(村本由紀子)
  • 社会環境と個人の心理・行動傾向とのダイナミックな関係に関心を持ち、「心の文化差」が生じるメカニズムや、集団規範や文化的慣習が生成・維持される過程について、実験とフィールドワークを両輪としたマルチ・メソッドで研究しています。(村本由紀子)

2.ゼミ運営で工夫している点とその成功例など

学部レベルでは、実験・調査・現場観察といった方法論に関する実習科目が数多く展開されています。学部生はそれらを受講することによって、各教員のラボで推進されている共同研究のメンバーに加わり、大学院生とも連携しながら、研究遂行の術を主体的・実践的に学びます。この経験が、やがて自らの研究関心に即した卒業研究の立案・実施へと結びついていきます。意欲のある学部生の場合、質の高い卒業研究を遂行して、その成果を学会で発表したり、卒業論文を学会誌に投稿したりするケースもみられます。

大学院レベルでは、日常的には各々の所属するラボで濃密な研究ミーティングを重ね、より速く、より多くの成果を挙げていくことが優先されますが、同時に、全教員・大学院生が一堂に会して行う合同ゼミや合同研究会での意見交換も重視しています。さらに、ゲスト・スピーカーを招いて年に数回開催される「新・社会心理学コロキウム」では、海外の研究者や他学問領域の研究者による刺激的なトークを間近に聴くことができます。こうした多彩な交流の機会を生かすことで、多くの大学院生が狭い関心に閉じこもることなく研究の幅を広げ、学際研究や産学連携研究にも主体的に参画するに至っています。国際学会での成果発表や国際学術誌への論文投稿も積極的に行っています。

3.ゼミ所属を希望する学部生,大学院生に向けてのメッセージ

人文社会科学は今、激しい変動の時代を迎えています。社会心理学もその例外ではありません。そうした激動の時代の中、私たちは、従来の研究領域の区別にこだわることなく、文理の壁をも超えて、貪欲に新しい学問のあり方を求めていきたいと考えています。

人間とは何者なのかを考察してきた、哲学をはじめとする人文学領域。人と制度・組織の関係を論じてきた、経済学・法学・政治学・経営学などの社会科学領域。これらとの連携はもちろんのこと、神経科学・生物学・情報科学といった自然科学領域とも手を携えながら、人と社会の関わり方をともに真摯に考え、新しい形の「人間知」を生み出すことを目指しています。21世紀の統合的な人間科学の実現に向けて、志・憧れ・野望をもつ人々にとっての知的なプラットフォームを作ること、それが私たちのミッションです。私たちは、このミッションに共感する多くの学部生・大学院生のみなさんに、当研究室の門を叩いていただくことを希望しています。