第2回日本社会心理学会春の方法論セミナー GLMMが切り開く新たな統計の世界
日時
2015年3月25日(水) 13時〜17時(12時半開場予定)
会場
上智紀尾井坂ビルB2F B-210教室
(アクセスマップ13番の建物)
参加費
無料(事前予約不要;会員以外の参加も可)
企画
日本社会心理学会新規事業委員会
司会
脇本竜太郎(明治大学)
講師
竹澤正哲(北海道大学)-なぜいまGLMMか
資料:動画
久保拓弥(北海道大学)-GLMMの紹介
資料:動画
清水裕士(広島大学)-社会心理とGLMMの関係
資料:動画
質疑応答
動画
概要
一般化線形混合モデル(Generalized Linear Mixed Model; GLMM )とは「変量効果を含む非正規なデータを分析するツール」である。あまり耳にしたことがない方も多いかもしれない。だがこの10年ほどの間に、心理学の外の領域で深く静かに浸透し、着実に影響力を広げつつある。動物行動学や生態学では、大学院の統計授業で最初に教える大学も増えつつある。第2回春の方法論セミナーでは、GLMMが切り開く新たな世界を紹介する。
だがなぜいまGLMMなのか?
いくつもの理由があるが、ここでは3つだけ紹介したい。
1. 社会心理学者が使う多くの統計ツールはGLMMによって置き換えられる
我々は、説明変数と被説明変数の関係を分析するために、数多くの道具を使い分ける:分散分析、重回帰分析、共分散分析、ロジスティック回帰、多項ロジット回帰、対数線形分析モデル、階層線形モデル、混合効果モデルなど。
これらすべての分析は、GLMMという単一のツールに置き換え可能である。分散分析と重回帰分析が一般線形モデル(General Linear Model)として統合されるのと同様に。
つまり、GLMMとは、我々の道具箱に新たに加わる「もう一つの道具」ではない。この道具を入手することで、他の道具が用いられなくなる可能性が存在する。
だが古く使い慣れた道具があるのに、なぜ新しい道具を用いる必要があるのか?
2. 扱いの困難なデータをエレガントに処理できる
我々がこれまで用いてきた道具は、反復測定、ネストされたデータ、階層構造を持つデータなど、独立性の前提が保証されないデータを扱うのが、あまり得意ではない。たとえば分散分析は反復測定されたデータを扱えるよう拡張されたが、そのためには球面性の仮定のテストや自由度の補正など、非常に煩雑な手順が必要とされる。
GLMMでは、こうした扱いの困難な様々なデータ構造を、変量効果(random effects)という単一の概念で表現してモデルに組み込む。これによって、従来の分析よりも遥かに簡潔かつエレガントな形で、独立性が保証されないデータを分析できるようになる。
3. 知識としてのGLMM
GLMMを知らなければ研究ができない時代が来るのは、まだ先の事かもしれない。だが、たとえ自らは利用しないとしても、これからGLMMを用いた論文が多く出版されることが予想される。また統計手法についての体系的な理解が可能となるため、GLMMの考え方を知ることは、大きなメリットをもたらすと私たちは考えている。多くの人々の参加を望んでいる。
セミナーの構成
まず、なぜいまGLMMが多くの領域に浸透し、人々の注目を集めているのかその背景を概観する(竹澤正哲)。
続いて、日本におけるGLMMの第一人者であり、『緑本』の著者として名高い久保拓弥氏(北海道大学)にGLMMの基本を紹介していただく。
最後に、社会心理学者が使い慣れた数多くの統計ツール(e.g., 反復測定分散分析、階層線形モデル、マルチレベルモデルなど)とGLMMの関連、そしてGLMMが社会心理学にもたらすメリットを紹介する(清水裕士)。